「お会計お願いします」なんて言うときは、それはつまり精算・支払のことですね。
他にも、現金や預金の出納業務のことを指して「会計」と言っているときもあります。帳簿付けのことを指すときもありますし、また、予算や決算の処理を行うことを指したりもします。
以前に書いた、公認会計士と税理士の違い、なんてことが絡んでくる領域では「会計」ではああだけど「税務」ではこうなんだよね、などと税務とは線引きして語られるのですが、「えっ、税金のことだって会計のうちじゃないの」という見方・立場もあるでしょう。
・・・会計って、何なんだ?
あるとき、前から所属しているある任意団体で、「林さん、あなた、専門なんだから、会計を引き受けてくださいよ」と言われたわけです。そこで私は尋ねてみました。
林 「会計って、出納のことを言ったり、帳簿付けのことを言ったり、役員さんなどに報告する仕事のことを言ったり、人によってすごく区々の意味で言ってるものなんだけど、そのうちのどこいらが、こちらの団体で言う『会計』の受け持つ仕事ですか?」
相手 「うん、そりゃもう、その全部ですよ。」
・・・まあ愚問でしたよね、訊いた私が馬鹿でした。でも、ちょっと気になるのは、じゃ、私は「専門」として出納業務もやってると思われてるのかな?税理士にせよ公認会計士にせよ、顧客の預金の引き出しとかするわけ無いんだけどな~と内心ちょっと「分かってもらえてない」不満を募らせてしまいました。まあお引き受けして今日に至りますが。
少しは公認会計士らしいことを書いてみましょう。
本当は、出納も帳簿付けも同じ人が担当するというのは、組織にとってリスクがあります。帳簿の記録と実際の現預金の動きが一致していなくても同一担当者その人以外には当面分からないということは、ちょっと考えたら非常に危ない。長年勤めていた経理の方がとんでもない額の横領をしていたなんて事件は大抵これでしょう。
さて、出納と帳簿付けの担当者を分けることが難しい場合でも、日々の現金在高表を利用したチェックや通帳と預金の元帳の突合を別の人が比較的短い周期で行うといった牽制の仕組みを機能させることで、上述のリスクは軽減できます。
そして、この手のチェックの仕組みに、上長(上役)による確認・決裁などを組み込んでおくことによって、組織にだけではなく、実は担当者側にも一定のメリットはあるのです。それは、「責任解除」ということです。例えば9月10日の金曜日の現金在高表とそこまでの預金元帳に同僚によるクロスチェックと上長の確認印を得られたら、担当者のほうはそこまでの帳簿作成等については一定限の責任が解除される、言い方を変えれば自分だけで責任を抱えこんだ状態から責任を上長等とシェアしている状態に変わるということです。これは、ストレスになりやすい経理業務の性質から言っても非常に大事なことですね。
元の話題から少し逸れてしまいました。次回は、続編として「会計士って誰。」を予定しております。国家資格としての公認会計士の独占業務などについては別稿で既に触れていますが、むしろ世間の誤解(或いは残念ながら無理解)の中に見られる会計士像を、本稿「会計って何。」のテーマとも絡めながら採り上げてみるつもりです。