公認会計士という国家資格については以前にその独占業務の面からご説明しました。
さて公認会計士、いかにも長いので、しばしば「会計士」と縮めて呼びます。
ところが、ここに既に誤解のきっかけが存在するワケでして、つまり「会計士ってのと公認会計士ってのがいるんだろ?」とおぼろに思っている人、若しくは確信している人がいらっしゃるようです。
大抵そういう方は、公認会計士のほうが公認されてるくらいだから上位の資格だ、という序列をイメージしてらっしゃいます。面白いのが、税理士もその序列に織り込もうという方も出て来て、「公認会計士>税理士>会計士だよ」という方と「税理士>公認会計士>会計士でしょ」という方に分かれたりしまして。もう聴いていてどうツッコめばよいのか分からない。しかし大事なことですからこの場では申しますが、公認会計士と税理士は、資格上の上位・下位という関係ではなく、そもそも独占業務が別な内容であり一方が他方を包含する関係にはありません。(これが弁護士と司法書士だと、司法書士の独占業務は独占と言っても弁護士には許されているという具合で弁護士の独占業務が司法書士のそれを含んでいますから、上位・下位という認識が妥当でしょう。)
ちなみにかつては公認会計士の下位に当たる資格で「会計士補」というものがありました。下位というより、公認会計士になるプロセスで取得するものだったのです。その次の試験(当時、三次試験と呼びました)に合格すると会計士になるという、途中段階の資格でした。しかし、この「会計士補」が「会計士」と誤認されたのではないでしょう。そもそも会計士補は世に知られなさすぎるくらいの存在でしたから。
むしろ、こういうことでしょう。おそらく、会計というものを、税務申告を最終目的と捉える中で、あくまで申告のための前処理という低い位置付けでのみ捉える方がおいでなのです。ですので、申告書の作成に責任を負って書名押印をする税理士に対して、より低次の「会計」を提供する(公認)会計士、というように、明確にではなくてもぼんやりと位置付けているのではないかと思います。
話が飛ぶのですが、本日、事務所に飛び込みの電話がありまして。法人を立ち上げて今度初めての決算。期中に継続的に帳簿を付けておらず、それを決算一発でやってほしい、申告は自分でやるから会計だけで幾らか見積もってくれ、という仰せです。まあ最低ラインとして○○万円くらいにはなりますよ、と申し上げたら、「じゃもういいです(ガチャン!)」。残念。しかし面白いのは、この経営者さん、電話帳かネットで弊事務所のことを見たのでしょうか、私に「会計士に頼みたい」ということを何度も仰ったのですね。
電話がガチャンと切られたあとでこの件を反芻していて、ああ、今の電話の主が仰った「会計士」というのは正にそういうこと(「より低次の会計を提供する」役割)だったのかもしれないな、と思い至ったというわけでした。
しかし、世にはびこるこの手の誤解を正すのは非常に難しい。違いますよ、こうなんですよ、と一生懸命説明していても、「会計士のほうが上だと言いたいんですね、お気持ち良く分かりますよ。」などと当方は求めてもない“理解”を示されたりして、話がグッチャグチャになるのがオチです。
ちょっと違う話ですが、「会計事務所」という名称には「会計士」との紐付けがあるという誤解に直面した経験もあります。“会計士だから会計事務所を名乗れる”、“会計事務所を名乗るからには会計士がやっている”、という一対一対応をイメージなさったようで。別にそんなルールはないので、税理士さんの事務所が「会計事務所」という屋号を掲げて全く問題はありません。ちなみに、独立開業している公認会計士は、日本公認会計士協会へは、「○○公認会計士事務所」ないしは「公認会計士○○事務所」という名称で登録するようになっています。税理士のほうも同様の事情です。しかし、屋号として使う名称がそれと全く一致することは求められていませんので、例えば「いちご会計事務所」といった屋号を掲げても構いません。私は電話口で「ハヤシ会計」くらいが言いやすかろうと思い、今の「林会計事務所」を屋号に致しました。・・・というわけで、今日も朝から、「おはようございます、ハヤシ会計です」!