1対1対応を無意識に当てにしてやしませんかという警鐘

 例えば名簿、そうですね。公認会計士協会に登録されている会員の名簿を考えてみましょう。公認会計士協会の登録番号と公認会計士であるその人は、1対1で対応している筈です。例えば登録番号999001番はA野太郎、999002番はB田文雄、999003番はC市早苗、999004番はD田聖子といった具合ですね。大勢いる中には、同姓同名の人も含まれてはいるでしょうが、本当に同一の人物が2つの番号で重複して登録されていることはない筈ですし、同じ番号が2人の会計士に付されているといったこともない筈です。

 こういう状態を1対1対応と言います。

 では、これはどうでしょう。上で考えた名簿に、誕生日の欄もあるという場合を考えます。年齢が分からないように生年は除いて、何月何日かだけを書いてあるとしましょうか。この場合、会計士とその誕生日は、1対1対応と言えるでしょうか?
 結論から言いますと、これは1対1対応ではありません。365人を超える人数がいる場合(そして会計士協会にはもっとたくさんの登録会員がいます)、必ず誕生日が重複する組み合わせが出てきます。
 この例では、人(会計士)を決めれば、誕生日は必ず一つに決まります。でもこれ自体は、1対1対応だということではなくて、数学の用語で言えば、一意の対応、と言います。そして実は、登録番号と公認会計士のように、番号を決めれば会計士が(一意に)決まるだけでなく、会計士を決めれば番号も(一意に)決まる、つまり双方向とも一意の対応になっているというけっこうスペシャルな対応関係が、1対1対応なのです。

 誕生日の例では、誕生日を1つ選んでもそれに対応する会計士はただ一人に決まるとは限らない(一意に決まらない)ので、1対1対応ではない、ということです。

 世の中のいろんな物事の中では、1対1対応のような対応関係は少なく、それどころか一意の対応ですらないことが多いでしょう。さっきの会計士の名簿に、好きなケーキを書いてある欄があったとしてみてください。A野太郎さんはモンブラン、B田文雄さんはシフォンケーキ、C市早苗さんは絞り込めずに苺ショートとレアチーズケーキ、そしてD田聖子さんは欲張ってモンブランと苺ショートとレアチーズケーキ、を選んでいたらどうですか。これだと、会計士を1人選んでもケーキは1つに決まるとは限らず、ケーキを1つ選んでも会計士は1人決まるとは限りません。双方向とも、一意の対応でもないということです。でもそういうことって、むしろありふれていることではないでしょうか。

 ところが、人は、経験などの中から、案外と安易に、1対1対応を発見(実は創作!)してしまいがちのようです。前に書いた記事の内容で言えば、「会計士は大企業、税理士は中小企業」なんてのもそうですね。おそらくそれは、1対1対応だと話がカンタンだから、なのです。人間の脳のクセ、なのかもしれません。赤の旗なら右手を上げて、青の旗なら左手を上げる。これなら確かに簡単で、頭をそんなに使わなくていい。脳は楽チンです。仕事もすぐ進むのかもしれません。しかし、多くの場合、その「1対1対応」は思い込みで、間違いの元、しくじりの元になると思ったほうがいいでしょう。
 「Aならば当然Bだ」という前提で考えてるけど、本当にそれ、根拠ありますか?或いは、例外はありませんか?そういう自己検証の習慣が、私は大事だと思います。敢えてドギツイ言葉で言えば、“1対1バカ”には陥らないようにありたい。それには、日頃から首を傾げて考えてみるクセを付けることが肝心なのです。

私ですか?そうですね、LINEのグループチャットは苦手です、ちょっと目を離していると何かをきっかけにスタンプがドドドとあっちこっちから湧いて来たりしてついていけません。やっぱりチャットは1対1に限る!!、、、、って、私が「1対1バカ」だったのかww・・・などと言いつつ最近chatworkの試験導入をしてみてます!タスク管理と業務の加速化、うまく行くものなのか?そのうち使ってみた感想なども書きますね。
※今日、私のノートパソコンのAのキーがおかしくなってまして、入力にひどく不便です。「打ち損ない」と書こうとして「打ちそこに」(naiがniになってしまっている)なんてのを繰り返してます。タイプミスが残っていたらごめんなさい。

この記事を書いた人

公認会計士・税理士 林宗義